大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和32年(う)422号 判決

被告人 古川忠治

〔抄 録〕

被告人の控訴趣意(三)(四)及び(六)について。

なお被告人は、被告人が、原判示第二の(B)第三及び第五に於て、判示各委任の趣旨に基き二幸運送有限会社代表取締役石井勝のために同会社の忍足幸栄に対する運賃債権として忍足いのより取立てた金千五百円、及び忍足幸栄の右二幸運送有限会社に対する運賃債務の弁済に充当するため、忍足幸栄の森梅吉に対する債権として森より二回に取立てた合計金二千三百円、並びに長谷川稔のために同人の青木源太郎に対する債権として三回に取立てた合計金一万五千円は、右各債権の一部弁済として受領したものであるから、各委任の趣意に従い債権全額の取立を完了するまでは、各委任者に対しその取立てた金員を引渡す義務は発生しないのであるから、その間に被告人が原判示各金員を費消したとしても、業務上横領罪を構成しないと主張する。然し、債権取立の委任を受けた者が、債務者より債務の弁済として金員を受領したときは、それが委任の趣旨に従えば一部の取立に過ぎないときであつても、その金員は特別の事情のない限り当然委任者の所有に帰するを以て、遅滞なくこれを委任者に引渡すことを要するものと解すべきところ、訴訟記録を調査検討してみても、叙上の判断を左右するに足る特別の事情は認められず、却つて、各委任契約によれば、取立金員はその都度委任者又はその指図人に引き渡すべきことが特約せられていたことが認められるのであるから、被告人のこの点に関する主張は到底採用し難く、論旨は理由がない。

(中西 山田 石井謹)

註 本件破棄は量刑不当による。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!